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「深夜特急」を再現する

 沢木耕太郎というノンフィクション・ライターの書いた「深夜特急」(第一便第二便第三便)という紀行本がある。70年代前半、ユーラシア大陸をバスを乗り継ぎ、ロンドンへ到着するまでの旅を淡々とした、ある意味ナルシスティックな筆致で描いた大著である。

 90年代半ば、にわかに「深夜特急」ブームが起こった。
 「進め電波少年」の人気企画、「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」の元ネタとして知られたことが直接のきっかけだったように思う。
 そのころ、ブームの兆しは確実にあった。テレビドラマ版「深夜特急」が製作・放映されたり、はたまた「アジアン・ジャパニーズ」「上海の西、デリーの東」といった「深夜特急」を焼き直したような書籍が出版され、ベストセラーになったりしていたのだ。
 電波少年か深夜特急のどちらが影響したのかわからないが、このときほど海外への一人旅が流行った時期はないように思う。

 97年の末に出版した処女作、「僕たちの「深夜特急」」は、沢木のルートをほぼそのまま辿った紀行著である。ローリング・ストーンズがブルースをカバーするのと同じく、一種のカバー作品といえるかもしれない。とはいえ僕はストーンズのようにオリジナルを愛していたわけではない。本を作ることが決まったとき、「深夜特急」は未読で好きでも嫌いでもなかった。
 元はと言えば、出版社が○匹目のドジョウを狙って企画したもの。最初、版元は旅行ライター・編集者の下川裕治に取材・執筆を依頼した。雑誌「格安航空券ガイド」の編集長をつとめたり、紀行著を次々と出版したりして多忙を極めている下川は当然断った。そして下川は僕に話を振った。「本を書いてみないか」と。当時、僕は下川が中心になって作っている雑誌「格安航空券ガイド」などで書いていた。収入は少なく、まるで爪に火をともすような生活を送っていた。嬉しかったのは間違いない。だけどそれは単に本が出せるから、そしてまとまった収入が入るからという単純な理由によるものだった。

 1997年の初旬に旅立ち、沢木と同じスタイル、ほぼ同じルートで旅をした。
 26才。奇しくも沢木が旅をした年齢と同じだった。バスを乗り継いで移動し、安宿に泊まり、西へ西へと進んでいった。決定的に違っている点がいくつかある。当然だけど旅をした時代が違う。沢木は小銭までかき集めて旅立ち、1年以上かけてユーラシア大陸を横断、書くまでに10年以上寝かせた。僕の場合、経費は版元が持った。旅行期間はたったの4カ月、帰国後、直ちに書き始めたのだ。
 できばえはオリジナルとは似ても似つかないものに仕上がった。今もそうなのだけど当時は今よりさらに文章力がなかった。それになにより文章量が少なすぎた。200ページ足らずの本に文章以上のスペースで写真が掲載されるというレイアウトだったのだ。皮肉なことだが、文章の質が低く、密度が薄いという点で原作との違いが際立っていたように思う。

 「深夜特急」に鉄道で移動する描写は少ない。なのになぜ「深夜特急」というタイトルなのかというと、それには由来がある。昨年末に発売された沢木の著書「旅する力」に種明かしがされている。
 「ミッドナイト・エクスプレス」という映画がある。トルコからアメリカへハッシッシを密輸しようとしたアメリカ人青年が、投獄され、獄中での悲惨な経験を経て、脱獄するまでを描いたもの。映画のタイトルになっている「ミッドナイト・エクスプレス」は脱獄を意味する隠語。沢木は映画のタイトルを日本語に訳し、自作のタイトルとしたのだ。

 映画を彷彿とさせる事件が起こった。

覚せい剤密輸の日本人ら逮捕/トルコ警察
2009/08/22 22:10

【カイロ共同】トルコ英字紙トゥデーズザマン(電子版)は22日、トルコ警察当局が覚せい剤のメタンフェタミンを大量にイランからトルコ経由で日本に密輸しようとしていた日本人4人とイラン人8人を先月逮捕したと伝えた。

 容疑者らは5回にわたり計85万錠のメタンフェタミン錠剤をイランからトルコに持ち込んでいたという。


 まるで映画の焼き直しである。

 僕が沢木のルートを辿ったように逮捕された日本人(暴力団員)は映画のストーリーをなぞるような仕打ちを受けたりするのだろうか。そして脱獄に成功したりするのだろうか。




追記1:猿岩石のヒッチハイクがやらせだと発覚したのはB級ニュース雑誌「GON!」に書いた拙記事がきっかけだったのかもしれない。「電波少年」同様に「GON!」もヤラセはたくさんやっていた。そんな「GON!」の拙記事が発火点となって発覚したのだとしたら、これもまた皮肉なこと。当時はそんな風には思わなかったけど。

追記2:「深夜特急」シリーズはもちろん既読です。処女作「僕たちの「深夜特急」」の出版が決まってからというもの、取材・執筆のおりおりにページをめくり続け、今までに合計10回は読みました。彼の書いたすべての作品のうち、半数以上は読んでいるはずです。どの作品もため息が出るぐらいに読ませます。引き込まれます。尊敬する作家の一人です。


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プロフィール

PEREZVON(ペレズヴォン)

Author:PEREZVON(ペレズヴォン)
西牟田靖(ニシムタ・ヤスシ)
1970年大阪府生まれ。神戸学院大学法学部卒業後、フリーライターになる。近年は旅・現場・実感にこだわるノンフィクション作品を発表し続けている。著書に『僕の見た「大日本帝国」』(2005)、『誰も国境を知らない』(2008)など。NPS(Nikon Professional Services)会員。
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近年、ノンフィクションライターと見なされることの多い西牟田靖のブログ。手間をいとわず、自分の好奇心に忠実な仕事をしていきます。

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