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幸せと辛さは紙一重

 月曜に約2歳の娘が熱を出し、その対応やらそれぞれの本業やらで妻も僕も負担が多い一週間となっている。正直、疲弊しまくっている。そうなると決まって悪くなるのが夫婦の関係だ。妻と僕との関係について、長くなるが書いてみたい。

 今週はお互いに忙しい。僕のことに関して言うと、締め切りがいくつも差し迫っていて、コツコツと執筆をすすめたり、取材に出かけたりとなかなかてんてこ舞いの日々である。睡眠時間を削り毎日深夜まで家で作業に取り組んでいるし、朝は朝で眠眠打破やチョコレートによって強制的に覚醒させて作業場で書いたり、取材に向かったり、はたまた打ち合わせしたりしている。ときどき、FBをのぞいたりするのでPCの前に座っている時間の割に成果は上がっていないが、とにかく時間だけは費やしている。
 忙しくなるとおろそかになるのが家事である。作業場から家に戻った後、ちゃんと家事に取り組んでから作業に励めば良いのに、今週、家事はほどほどにしかやっていない。いつもは僕が作る弁当は今週一回も作っていない。主に妻の分担になっている洗濯については干すことはおろか乾いたものをたたむ、といったことについてもやっていない。その一方、妻が家事をしている横でPCの前に座り続けている。妻が寝た後も座り続け、深夜の1時、遅いときには3時頃まで寝ないこともしばしばである。もっと寝ていない人はもちろんいくらでもいるのだろうが、先週、先々週と似たような生活をしているし、むしろ10日前とかの方が寝ていなかったので、疲れは繰り越して蓄積しているということなのだろう。昨日なんて、PCの前でスティービーのように首を振ったり、お辞儀をするように上体を前後に揺り動かしたりと気がつけば朦朧としていた。
 妻や娘へのケアまでには気が回っていないためか、妻は今週しばしば夜中や朝に爆発する。夜中は娘の夜泣きの為である。朝は支度でバタバタしている時である。パターンは決まっているし、本人は後で反省し殊勝な文面のメールをよこしたりする。関係を破綻させようと思っていたり、僕のことが心底嫌いで怒っているわけではないってことはもちろんよく理解している。妻が爆発しても冷静に受け止めてあげればその後お互いが気まずい思いをしないし、関係を取り繕う必要はなくなる。イライラしたり、疲労が蓄積したりして書けなくなるという事態には発展しないはずだ。しかし、そのときはたいてい受け止め損ねてしまい、無視したり反論したりして、余計な傷を負ってしまう。
 その時点になってもまだ挽回策はある。甘いものをおいとくとか、子どもが風邪を引いて多くなった家事に率先して取り組むとか、マッサージしてねぎらってあげるとかすればいい。そんなちょっとの気遣いで関係は劇的に良くなるのは経験則として分かっている。だが今回それもしていない。執筆が乗り出したときの波に乗りたくてつい怠ってしまうのだ。
 加えて、子どもの風邪がうつってしまった。早く回復するように休めば良いのだが、締め切りに追い立てられてしまっているので、休むどころかいつも以上に脳を回転させてしまい、その挙げ句に風邪をこじらせ、作業の手が完全に止まったというわけだ。

 このデフレスパイラルのような関係悪化の推移って去年の今ごろに似ている。去年、僕は新書の執筆に掛かりきりで、家にあまり帰らなかったため、妻は疲弊したあげくに鬱となり、ついには会社を辞めざるを得なかった。いまはだいぶ回復したが、今も心療内科に通っていて、完全に復調したとはいえない。
 妻の病気は僕のやりくり下手のせいである。責任はすべて僕にあるってことは分かっている。子どもができて、生活パターンが一変したというのに、すべてを作業優先、つまり行きたいときに取材に出かけ、書きたいときに書くというパターンを捨てずにだらだらと続けた。自分なりに配慮したつもりだったが、家事は基本的に妻がやって当たり前という気持ちが潜在意識に強固に埋め込まれていて、僕を収入面で育ててくれた実家の父のような態度を知らず知らずのうちにとってしまっていた。九州男児の父はとにかく家事という家事をしない人なのだ。
 結果的に妻が疲弊していくのを食い止めることはできなかった。というかそもそも努力をあまりしなかったし、それどころか疲弊していることにあまり気がついていなかった。僕が父と決定的に違うのは家計への関わり方である。父は建設会社を経営し、収入はかなりのものだ。税理士とは普段から付き合って、いろいろと相談に乗ってもらう仲だ。家計は当然、父がすべて支えているといっていいだろう。それにひきかえ僕はというと、収入が基本的に少なく、かつ不安定なので、常に家計を支えるわけにはいかない。本の執筆に没頭したものの作業がなかなか終わらなかった年なんて、年収が3桁に満たなかったほどだ。妻は有能で仕事も出来る。収入はそこそこある。というわけで2007年に結婚してからというもの、家計については、成り行きでほとんど妻任せとなっていた。子育てと日々の労働という二大要素によりたまっていく疲労に加え、一家の大黒柱として家計を支えるプレッシャーまでを僕は妻に背負わせていた、ということになる。

 誰にも支持されないのを承知で書くのだが、僕にも言い分はなくもない。妻はもともと僕の読者である。だからこそ作家の妻として僕の時間の使い方にもっと理解があるのだと思っていた。家計についても、儲からなくても、頑張って書いているのだから、大目に見てくれていると勝手に解釈していた。
 ところが子どもができてから妻の態度が一変した。子どもが生まれてからというものの、妻がすべて子ども優先する態度をとるようになり、僕の話をあまり聞いてくれなくなった。そのあげくに、いきなり家計の半分を負担するように言ってきた。妻が鬱になり壊れたころだから昨年の秋のことだ。
 そのときの僕の心境は、いきなり黒船にやってこられた幕府の役人の心境に似ているのかもしれない。心構えがしっかりしてなかったせいもあって、驚き、慌て、落ち込んでしまった。
 その後、僕は反省し、妻の意向になるべく沿うように生活リズムを改革した。加えて、一般的な家庭でそうしているように毎月、家計にお金を入れ、家事をなるべく手伝うようにした。そうして秋以降、小規模な爆発はお互いに記録するものの、基本的には万事がうまくいくようになった。とはいえ僕は子どもが生まれてから一度も海外へ行ってないし、取材のための出張も泣く泣く最低限に抑えているのだから鬱々とした気持ちが蓄積されていっている。そのことは確かなことだ。
 子どもは可愛いし、今後ずっと育てたいと心から願う。成人するまで一緒に生活したい。だけど一方、子どもが生まれるまで、時間やお金、労力を捧げてきた、海外をはじめとする取材や旅行、そして執筆活動をいつまでセーブし続けなきゃ行けないのだろう、と思うのも確か。フットワークの軽さが僕の身上だというのに、回りの同業者があちこち出かけているときに、僕だけなんで、と思うとときどき死にたくなるぐらいに落ち込んでしまう。ふつふつと前触れなく怒りがこみ上げたりもする。はまってしまったクレバスの底から空を眺めている登山家の心境はこのようなものなのだろう。
 そんな状態のときに限ってまだ2歳にもならない娘が「パパ絶好調!」と励ましてくれる。その都度、ファイトがもりもりとわいてくる。だがこうして、いろんなことが重なってやるべき原稿が一向に進まなくなったとき、娘に「絶好調」と言われる前の、クレバスの下の探検家のような気分に逆戻りする。
 人並みの幸せというものを今までまったく実感したことがなかった。GWや盆の終わりにUターンラッシュが決まって起こるが、そうした光景を馬鹿にしているフシすらあった。しかし、今の僕には、その人並みの幸せという、実際には存在しないかもしれないけど、あるのかもしれない状態にいるんではないか、、、、とも思う。
 子どものいる親は様々なことを犠牲にして生活を成り立たせ、それぞれに幸せな状態を維持している。僕もその一人である、という実感をいま強く自覚している。幸せか、それとも不幸せかと聞かれたら、迷わずに「幸せ」と答えるはずだ。しかし不自由でもあることも事実である。
 この両面性こそが子育ての醍醐味なのだろう。正直とても面白い。だが、今のように一時的に関係が悪くなったり、疲弊したりするたびに辛さが幸せに勝るのも事実である。そういや「幸」と「辛」という字はそっくりだ。子育てをしている幸せって結構、辛さと紙一重なのかもしれない。
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プロフィール

PEREZVON(ペレズヴォン)

Author:PEREZVON(ペレズヴォン)
西牟田靖(ニシムタ・ヤスシ)
1970年大阪府生まれ。神戸学院大学法学部卒業後、フリーライターになる。近年は旅・現場・実感にこだわるノンフィクション作品を発表し続けている。著書に『僕の見た「大日本帝国」』(2005)、『誰も国境を知らない』(2008)など。NPS(Nikon Professional Services)会員。
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近年、ノンフィクションライターと見なされることの多い西牟田靖のブログ。手間をいとわず、自分の好奇心に忠実な仕事をしていきます。

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